歯並びは人の印象に大きく影響します。すきっ歯がある方は、それをコンプレックスに感じることもあるかもしれません。マウスピース矯正は、すきっ歯を治す矯正方法の一つです。
特に、「すきっ歯を治したいけれど矯正装置を目立たせたくない」とお考えの方におすすめの方法が、マウスピース矯正です。
本記事では、マウスピース矯正ですきっ歯を治すことについて、詳しく解説します。マウスピース矯正ですきっ歯を治したいと考えている方は、是非とも参考にしてください。
そもそもすきっ歯とは？
すきっ歯とは、歯と歯の間に隙間がある状態をいいます。すきっ歯は、全体的に歯と歯の間に隙間がある空隙歯列（くうげきしれつ）と、前歯だけに隙間のある正中離開（せいちゅうりかい）の2タイプがあります。すきっ歯が発生する主な理由には、遺伝的な要因と環境的な要因があります。それぞれ説明します。
遺伝的な要因
遺伝的な要因には、歯の大きさや顎の骨格、歯を支える骨などがあり、これらは親から受け継がれる要素が大きく影響します。
前歯部分だけすきっ歯になっている場合は、歯と歯の間に過剰歯が埋まっていることや上唇小帯が歯と歯の間に入り込んでいる付着異常が考えられます。その場合、歯列矯正に先立って、過剰歯の抜歯や上唇小帯の切除が必要になることがあります。
環境的な要因
すきっ歯は生活習慣の影響も受けます。無意識のうちにしてしまう口まわりの癖を悪習癖（あくしゅうへき）といいます。例えば、指しゃぶりや舌で歯を押す、舌の位置、唇をかむ、爪をかむなどの癖です。また、虫歯などで歯を失った後、放置すると歯が移動し、すきっ歯になることもあります。
マウスピース矯正は治療方法の一つ
マウスピース矯正はすきっ歯を治す治療方法の一つです。
マウスピース矯正は、透明なマウスピースを使用して歯並びを調整する治療方法です。患者さま一人ひとりの歯並びに合わせてカスタマイズされたマウスピースを使用します。1〜2週間ごとに新しいマウスピースに交換しながら歯に力を加え、徐々に歯を理想の位置へと移動させていきます。
しかしマウスピース矯正は、すべての症例には対応していません。一般的には軽度から中程度の歯並びに適しており、適用できないケースもあります。自分のすきっ歯がマウスピース矯正の対象かどうかは、歯科医師による診断が必要です。
マウスピース矯正の治療期間
矯正が必要な歯の数や歯の移動が必要な距離、患者さまの年齢や口腔内の健康状態など、さまざまな要因によって期間は変動します。矯正治療には、限定的な部分を矯正する部分矯正と奥歯を含めたかみ合わせも矯正できる全体矯正があります。
全体的に隙間がある場合、全体矯正が適している可能性が高く、個人差はありますが、通常は2〜3年程度の治療期間が必要です。ただし、前歯の一部分のみに隙間がある場合は、部分矯正が適応されることもあり、その矯正期間は通常3ヶ月〜1年程度です。
前歯の一部分のすきっ歯を治したい場合も、かみ合わせなどに問題があれば、全体矯正が必要になることもあります。また、歯並びが整い矯正治療が終わった後は、リテーナー（歯並びを維持するための装置）を装着する保定期間が必要です。保定期間は、矯正治療期間と同じくらいの期間が求められることが一般的です。
マウスピース矯正の治療費用
マウスピース矯正の費用相場は、治療を行う歯科医院や治療の複雑さ、マウスピース矯正の種類によっても大きく異なります。治療費用は数十万円〜100万円程度と幅があります。
費用に含まれるのは、初診料やマウスピースの製作費、定期的な診察料などです。また、治療後のリテーナーの費用も考慮する必要があります。
多くの歯科医院では、治療計画の初期段階で詳細な見積りを提供してくれるため、事前に費用について把握でき、不明点を解消できます。また、マウスピース矯正は自費診療になり、保険適用にはなりません。
マウスピース矯正で治すメリット
マウスピース矯正ですきっ歯を治すメリットは次のとおりです。
- 矯正装置が目立ちにくい
- 取り外しが可能で衛生的
- ワイヤー矯正との比較
- 金属を使わない
- 治療結果を予測しやすい
順番に説明します。
1：矯正装置が目立ちにくい
マウスピース矯正で使用するマウスピースは薄く透明なので、着用していてもほとんど目立ちません。そのため、日常生活や仕事中でも矯正装置が目立つ心配が少ないため、治療を受けやすくなるでしょう。
2：取り外しが可能で衛生的
マウスピースは自分で着脱できます。そのためマウスピースを外して食事や歯磨きができるので、口腔内を清潔に保ちやすくなります。矯正装置が邪魔で食べにくくなることや歯磨きがしにくいなどの心配がなく、矯正期間中のストレスを軽減できるでしょう。
3：ワイヤー矯正との比較
矯正方法にはマウスピース矯正以外にもワイヤー矯正などがあります。
マウスピース矯正は、ワイヤー矯正に比べて矯正装置による違和感や痛みが少なく、トラブルが起きにくい傾向があります。着脱ができないワイヤー矯正では装置が外れたり、装置で口腔内を傷つけたりするリスクがあります。また、ワイヤー矯正はマウスピース矯正に比べて歯に加わる力が強いため、痛みを感じやすくなることがあります。
4：金属を使わない
マウスピース矯正は金属を使用しません。そのため、金属アレルギーのある方や口腔内に金属を使用することに抵抗のある方も安心して治療を受けられます。
5：治療結果を予測しやすい
マウスピース矯正では、治療開始前にコンピューター上で治療計画を立て、最終的な歯並びを予測します。患者さまは治療結果をあらかじめ視覚化でき、矯正治療のモチベーションを維持しやすくなります。
マウスピース矯正の注意点
マウスピース矯正ですきっ歯を治す際には、次のような注意点があります。
- すべての症例に適用できない
- 患者さまの協力が不可欠
- 自己管理が必要
一つずつ説明します。
1：すべての症例に適用できない
マウスピース矯正は、すべての症例に適用できるわけではありません。
特に重度の咬合不正や複雑な歯並びの場合は、別の矯正方法を推奨されることがあります。歯並びや顎の状態はそれぞれ異なるため、マウスピース矯正が適切か否かは歯科医師による診断が必要です。
2：患者さまの協力が不可欠
マウスピース矯正を治療計画どおりに進めるためには、患者さま自身の協力が不可欠です。
1日20時間以上、マウスピースを着用する必要があり、着用時間が不十分だと歯が治療計画どおり動かず治療期間が延びるまたは期待する結果が得られないこともあります。
3：自己管理が必要
マウスピース矯正では、以下の自己管理が求められます。
- マウスピースを1日20時間以上着用する
- 予定されたタイミングでマウスピースを交換する
- マウスピースの清掃
- 飲食の際にはマウスピースを外す
- マウスピースを装着する前は、歯磨きして清潔な状態を保つ
水や白湯を飲むときは、マウスピースをつけたままでも問題ありませんが、基本的にマウスピースをつけたまま飲食はできません。慣れるまで、マウスピースの着脱を面倒に感じてしまうこともあるでしょう。食後は、マウスピースを装着する前に歯磨きや口をすすぐことが大切です。これによって、食べかすがマウスピースにはさまり、虫歯のリスクを高めることを防ぎます。
マウスピースは透明で目立ちにくいとはいえ、1日20時間以上装着するので適切な手入れが必要です。また、万が一マウスピースを紛失してしまった場合は、マウスピースを再度作らなければならないことやそれによって治療期間が長引くこともあります。マウスピースの再製にも費用がかかりますので注意しましょう。
すきっ歯を治す他の治療方法
マウスピース矯正以外の治療方法として、ワイヤー矯正があります。
ワイヤー矯正には、表側矯正と裏側矯正の2種類があり、それぞれ異なる特性があります。
表側矯正
表側矯正は、ブラケットとワイヤーを歯の表面（口を開けたときに見える側）に装着する最も一般的な矯正方法です。この方法は幅広い症例に対応でき、特に歯並びに重度な問題がある場合や複雑なかみ合わせの問題にも効果的です。しかし、装置が目立ちやすいデメリットがあります。近年では、従来のメタルのブラケットとワイヤーだけではなく、目立ちにくいホワイトや透明のブラケットとホワイトのワイヤーも選択できるようになりました。
裏側矯正
裏側矯正は、ブラケットとワイヤーを歯の裏側（舌側）に装着する方法です。表側矯正と同じように、幅広い症例に対応可能でありながら、装置が見えにくいことが最大のメリットです。ただし、裏側矯正は技術的な要求が高く、費用は他の矯正方法に比べて高額な傾向にあります。
自分に合った矯正方法を見つける
矯正治療方法を選ぶ際は、自分のライフスタイルや矯正に対する希望、予算を考慮しましょう。
例えば、社会人や大人であれば、目立たないマウスピース矯正が適しているかもしれません。一方で、矯正が必要な歯の数や咬合の複雑さによっては、ワイヤー矯正の方が適している場合もあります。
口腔内はそれぞれ異なるので、自己判断はできません。自分のニーズに適した矯正方法を選ぶためには、歯科医院での十分な相談が必要です。
まとめ
マウスピース矯正はすきっ歯を治す矯正方法の一つです。審美性に優れているので、矯正器具を目立たせたくない人におすすめです。しかし、歯並びの状態によっては、適用外になるケースもあります。マウスピース矯正が適用なのかどうかは、歯科医師の診断が必要です。
「すきっ歯を治したい」「マウスピース矯正を検討している」このように考えている方は、歯科医院での相談をおすすめします。当院でもマウスピース矯正の相談をお受けしておりますので、お気軽にご相談ください。