2024.07.17
2024.08.23

ガタガタの歯並びは治せる?

 

 

新型コロナウイルスの流行が落ち着きマスクを装着する機会が減ってきました。そのため、口元が気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、ガタガタに見える歯並びの原因やその治療について説明します。

叢生(そうせい)の原因

歯が重なり合ったり、歯並びがガタガタしたりしている状態のことを専門用語で叢生といいます。この項目では、叢生の原因について説明します。

  • 歯と顎のバランスの問題
  • 顎の大きさに対して歯が大きいと適切な場所に歯が生えることが難しくなるため、叢生になることがあります。また、歯の大きさが普通のサイズの場合でも、顎の大きさが小さいと、叢生の原因になります。

  • 乳歯の早期脱離
  • 乳歯が虫歯などで早期に抜けてしまうと、抜けてしまったスペースを埋めるように乳歯が動きます。その結果、永久歯がはえるスペースが少なくなり叢生の原因になります。

  • 口呼吸や舌癖(ぜつへき)
  • 口呼吸や舌癖も叢生の原因になることがあります。口呼吸があると口が開きっぱなしになり、唇の筋肉が緩んでしまいます。その結果、前歯が前方に動くことがあります。また、舌で前歯を押したりする舌癖がある場合も歯が前方に動き叢生の原因になることがあります。

叢生による悪影響

では、具体的に叢生により引き起こされる悪影響にはどのようなものがあるのでしょうか。以下にまとめました。

  • コンプレックスになる
  • 人の第一印象の構成要素として口元の印象が挙げられます。そのため、歯並びが良くないと人前で口を開けることに抵抗を感じることがあり、コンプレックスの原因になります。

  • 歯周病や虫歯になるリスクが高くなる
  • 歯並びが悪いとお口の清掃が難しくなり、歯並びが綺麗な人に比べて磨き残しが増える傾向にあります。その結果、虫歯や歯周病のリスクが増加します。

  • 滑舌が悪くなる
  • 前歯に叢生があると舌や唇の動きに制限がかかり滑舌が悪くなることがあります。また、前歯に隙間があるとサ行やタ行などの発音が難しくなります。

  • 顎関節症になるリスクがある
  • 奥歯に叢生があると物を噛んだときの過剰な負荷が顎関節にかかり顎関節症になるリスクが高くなります。顎関節症の症状が悪化すると顎関節に痛みが出たり、お口が開きにくくなったりします。

  • 十分な咀嚼(そしゃく)ができない
  • 奥歯のかみ合わせが悪いと物を噛む機能が低下します。十分に咀嚼ができないと食べ物を丸呑みすることになり、胃腸系への負担の原因になります。

歯が動く仕組みと矯正治療の種類

ここまでで叢生による身体的な影響について説明しました。次に叢生を治療できる矯正方法とその仕組みについて説明します。

歯が動く仕組み

歯の根っこのことを歯根(しこん)といいます。歯根の周りには歯根膜と呼ばれる薄い膜が存在します。歯根膜には食事をしたときに噛む力が歯に過剰に加わらないようにするクッションのような働きがあります。また、歯根膜の性質として膜の厚さを一定に保つというものがあります。この性質が歯を動かすのにとても重要な役割を担います。

矯正治療では、動かしたい方向に力を加えます。歯に力を加えると力が加わった方向の歯根が圧迫され、反対方向の歯根膜が引き伸ばされます。先述のように歯根膜には厚さを一定に保つ性質があります。この性質により、力が加わった方向では縮んだ歯根膜分の厚さを保つために歯の周りにある骨を溶かす細胞である破骨細胞(はこつさいぼう)の作用が高まります。一方で、反対側の歯根膜では伸びた分の歯根膜を一定に保つために骨を作る細胞である骨芽細胞(こつがさいぼう)の機能が高まります。以上のように、矯正治療では骨の再生と破壊を繰り返すことで歯を動かします。

では、叢生を治療できる矯正方法にはどのような種類があるのでしょうか。以下に矯正方法の種類とその特徴について説明します。

マウスピース矯正

マウスピース矯正は、インビザラインなどの透明なマウスピース型の装置を使用した矯正方法です。現在の歯並びとは少しズレたマウスピースを装着し、そのズレにより生じた力を利用して歯を動かします。

ワイヤー矯正

ワイヤー矯正は、ブラケットと呼ばれる小さな矯正装置を歯に装着し、そこにワイヤーを通すことで歯を動かす矯正方法です。ワイヤー矯正には、矯正装置を歯の表に装着する方法である表側矯正、歯の裏側に矯正装置を装着する裏側矯正の2種類があります。

各矯正治療のメリット・デメリット

ここまでで叢生が治療できる矯正方法について説明しました。では、具体的にこれらの矯正治療にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。以下にまとめてみました。

マウスピース矯正のメリット

まずは、マウスピース矯正のメリットについて説明します。

  • 矯正中の見栄えが良い
  • マウスピース矯正では、透明なマウスピースを使用するため矯正治療中の見栄えを気にすることなく治療を行うことができます。

  • 取り外しができる
  • マウスピースを使用するため、食事や歯磨きの時に自由に取り外しができます。そのため、矯正開始前とあまり変わらない状態でお食事や歯磨きなどができるので精神的な負担が少ないというメリットがあります。

  • 痛みや違和感が少ない
  • マウスピース矯正は、歯に加わる力が比較的弱いため矯正治療時に感じる痛みは低い傾向にあります。また、マウスピースが薄いため違和感も少ないといわれています。

  • 通院回数が少ない
  • マウスピース矯正では、治療開始時に複数のマウスピースを数枚渡されます。そのため、通院は2~3ヶ月に1回と比較的少ない回数で済ませることができます。

マウスピース矯正のデメリット

次にマウスピース矯正のデメリットについて説明します。

  • 適応症例が限定される
  • マウスピース矯正は、歯を動かす力が弱いため、治療を行うことができる症例が限定されます。叢生の中でも重度な症例で大きく歯を動かす必要がある場合は、マウスピースを使用した矯正治療が難しいことがあります。

  • 装着時間を守る必要がある
  • マウスピース矯正では、マウスピースを1日に20時間以上装着する必要があります。そのため、装着時間が短いと歯の矯正効果は出にくくなり矯正治療が長引くことがあります。

  • 自己管理が必要
  • マウスピースを装着した状態で飲食を行うと、マウスピースが破損する原因になります。また、食後にブラッシングを行わない状態でマウスピースを装着すると、マウスピースの内面に食べ物が入り込み虫歯や歯周病の原因になることがあります。このようなトラブルを避けるためにも自己管理をしっかりと行う必要があります。

    次にワイヤー矯正のメリット・デメリットを表側矯正と裏側矯正に分けて説明します。

表側矯正のメリット

まず、表側矯正のメリットについて説明します。

  • 適応症例が広い
  • ワイヤー矯正は、歯にかかる力が大きいため歯を大きく動かすことができます。そのため、重度の叢生症例に対しても治療を行うことができます。

  • 清掃がしやすい
  • 表側矯正では、歯の表面に矯正装置を装着しています。そのため、鏡で見て確認しながらブラッシングを行うことができ、比較的清掃しやすいという特徴があります。

  • 値段が比較的安い
  • 裏側矯正と比べて表側矯正の治療費は比較的安い傾向にあります。

表側矯正のデメリット

次に表側矯正のデメリットについて説明します。

  • 矯正中の見栄えが良くない
  • 歯の表面に矯正装置を装着するため、矯正中は矯正装置が目立ってしまいます。

  • 口腔粘膜に傷が付く
  • 表側矯正では、ブラケットやワイヤーをお口の中に装着します。これらの装置が頬や唇の内側に当たり傷ができることがあります。特に治療の初期段階では、歯並びが悪いためお口の中の粘膜が傷つきやすくなります。

  • 口が閉じにくくなる
  • 前歯部の表面に矯正装置を装着するため、矯正治療を始めてすぐの段階では、お口が閉じにくくなります。また、口元が前に出ているように見えることがあります。

裏側矯正のメリット

次に裏側矯正のメリットについて説明します。

  • 矯正中の見栄えが良い
  • 裏側矯正では、矯正装置を歯の裏側に装着します。そのため、矯正装置が見えにくく、見栄えを気にすることなく矯正を行うことができます。

  • 舌癖の改善ができる
  • 歯並びが悪くなる原因として舌癖があります。舌癖とは、舌で前歯を押してしまう癖のことで、この癖は出っ歯の原因になります。裏側矯正では、前歯の裏に矯正装置を装着するのでこの舌癖を改善することができます。

裏側矯正のデメリット

次に裏側矯正のデメリットについて説明します。

  • 治療費が高い
  • 裏側矯正は、歯の裏側に矯正装置を装着するため高度な技術と経験が必要となるため、専門性が高くなり治療費が高くなります。

  • 滑舌が悪くなる
  • 裏側矯正では、矯正装置が歯の裏側にあるため舌の運動が制限されます。この影響から治療を始めて1〜3週間頃まではサ行・タ行・ラ行などの発音が難しくなり滑舌が悪くなります。

  • ブラッシングが難しい
  • 一般的に歯の裏側は、直接目で見ることが難しいため磨き残しが多いといわれています。裏側矯正では、歯の裏側に矯正装置を装着しているため、ブラッシングが更に難しくなります。

  • 違和感が強い
  • 矯正装置が歯の裏側に存在するため表側矯正と比較して違和感を強く感じることが多くなります。この違和感は個人差がありますが1〜2週間程度で慣れるといわれています。

まとめ

今回は、歯並びがガタガタに見える叢生について説明しました。
叢生は、歯や顎の大きさのバランスの不均衡、乳歯歯列の状態などが原因で起こります。叢生を治療する矯正方法としては、マウスピース矯正、ワイヤー矯正があります。マウスピース矯正は、透明なマウスピースを使用した矯正方法で、歯列とマウスピースのズレを利用することで歯を動かします。一方で、ワイヤー矯正治療は歯に矯正装置とワイヤーを装着することで行われる矯正治療です。ワイヤー矯正には、歯の表面に矯正装置を装着する表側矯正と歯の裏側に矯正装置を装着する裏側矯正があります。

これらの矯正方法には様々な特徴があります。これらの特徴をしっかりと踏まえた上でご自身に合った矯正方法を選択しましょう。