2024.10.08
2024.09.26

受け口の矯正を行わないリスクと治療方法

 

 

「受け口は大人からでも治せる?」
「受け口を放置するとどうなるの?」

大人になってから受け口が気になり始めたという人もいるのではないでしょうか?

受け口の矯正は早い方が良いとされていますが、大人になってから治療を受ける人もいます。受け口は、顔立ちだけでなく全身の健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、放置することはおすすめしません。

この記事では、受け口になる原因や矯正を行わないリスク、治療方法についてお伝えします。

受け口とはどんな状態?

受け口とは、下の歯が上の歯よりも前に出ていて、上下のかみ合わせが逆になっている状態を指します。別名、反対咬合(はんたいこうごう)や下顎前突(かがくぜんとつ)ともいいます。

前歯が正常なかみ合わせと反対になっているため、食べ物をかみづらいのが特徴です。

また、受け口の程度によっては下あごが前に突き出して、いわゆるしゃくれのような状態になります。特に横顔のフェイスラインに顕著に現われ、コンプレックスの原因になることもあるでしょう。

受け口になってしまう原因

受け口になってしまう原因は、主に以下の5つがあります。

  • あごのアンバランスな成長
  • 幼少期の悪癖
  • 口呼吸
  • 前歯の角度
  • 親からの遺伝

受け口は遺伝よりも、幼少期の生活習慣や癖が原因になっている場合が多いといわれています。受け口の原因について1つずつ詳しく説明します。

あごのアンバランスな成長

上あごの成長不足や下あごの過成長によって上あごよりも下あごが大きくなり、あごがアンバランスな状態になると、受け口になりやすくなります。

あごの成長がまだまだ続く子どもの場合は、成長過程でさらに受け口の状態が悪化する恐れがあります。

幼少期の悪癖

幼少期に無意識のうちに繰り返していた口周りの癖が、受け口の原因になる場合があります。

受け口の原因になる癖は次のとおりです。

  • 頬杖
  • 爪をかむ
  • 唇を吸う
  • 指しゃぶり
  • うつぶせ寝
  • 舌で前歯を押す
  • あごを前に出す

成長期の子どもの骨は柔らかいため、頬杖やあごを前に出す仕草を続けていると、あごの位置がズレて、受け口になることがあります。

口呼吸

口呼吸が癖づいていると、受け口になりやすいといわれています。口呼吸によって舌の位置が下がり、下あごを押し出す原因となるからです。

本来舌の先端は、上の前歯の後ろ辺りに触れているのが正しいポジションです。

しかし、口呼吸によって常に口が開いていると、舌が下がってしまい、下あごや下の歯の歯列を内側から押し出す力が働きます。

鼻詰まりで一時的に口呼吸になっている場合は問題ありませんが、口呼吸が癖づいていると、下あごに常に圧力がかかり受け口の原因になる場合があるでしょう。

前歯の角度

あごや骨格のバランスが良くても、歯の生える位置や角度が原因で受け口になるケースもあります。

上の歯が内側に傾いている、または下の歯が外側に傾いているとかみ合わせが逆になるため、受け口になってしまいます。

症例によっては、前歯の生え方とあごの成長の両方が原因となっていることも珍しくありません。

親からの遺伝

歯並びは遺伝的な要素だけで決まることはありませんが、両親または祖父母が受け口であると、子どもに引き継がれる可能性があります。

ただ、それ以上に生活習慣や口周りの癖が原因になることが多いので、歯並びに悪影響を及ぼす頬杖やうつ伏せ寝などを改善する意識を持つことが大切です。

受け口の矯正を行わない場合のリスク

受け口の矯正を行わず放置した場合、以下の5つのリスクがあります。

  • 顔立ちに影響が出る
  • 発音しづらくなる
  • あごや歯に負担がかかる
  • 消化不良を起こしやすい
  • 全身のバランスが悪くなる

矯正を迷われている方は、放置するリスクを知ることで治療を行うべきか落ち着いて判断できるでしょう。

顔立ちに影響が出る

受け口は顔立ちに大きく影響します。下あごが前に出てしゃくれたような風貌になるため、顔や輪郭の印象が悪くなるでしょう。

また、メイクだけではカバーできず、コンプレックスを抱えてしまうことも少なくありません。

発音しづらくなる

歯並びが悪いと発音の障害が起こりやすくなります。受け口の人が発音しづらいのは、かみ合わせが通常と逆となり、上下の歯の隙間から息が漏れてしまうのが原因です。

歯と舌が触れるサ行とタ行の発音が特に難しく、滑舌の悪さにつながります。

滑舌の悪さから、コミュニケーションがうまく取れず、日常生活に支障が出ることもあるでしょう。

あごや歯に負担がかかる

受け口はかみ合わせの悪さから、あごや歯への負担が大きいのも特徴です。そのため、顎関節症を引き起こすリスクがあります。

また、奥歯にも強い負担がかかっており、将来歯を失うリスクも高まります。かみ合わせが複雑なため、磨き残しが多くなり虫歯にもなりやすいでしょう。

受け口のセルフケアでは、自身の歯並びに合ったブラッシングを歯科医院で指導してもらうなどの工夫が必要です。

消化不良を起こしやすい

あごのズレが大きい受け口の人は、前歯で食べ物をうまく噛み砕くことができません。そのため、食べ物が大きなまま胃腸に運ばれて、消化不良を起こしやすくなります。

よく噛まずに食べてしまうことから早食いになり、肥満の原因にもなるでしょう。

全身のバランスが悪くなる

受け口は全身のバランスにも大きく影響します。人は下あごの筋肉を使って全身のバランスを維持しているといわれています。

ところが、受け口の人は上下のあごのバランスが悪いため、全身のバランスも悪い傾向にあります。
そのため、身体に歪みが生じ、肩こり・関節痛・頭痛・腰痛・めまい・吐き気などの症状を引き起こす恐れがあります。

受け口の矯正は早い方が良いとされる理由

受け口の矯正はタイミングが遅れてしまうと、顔立ちに大きく影響することから、早い方が良いとされています。

特に子どもの場合は、あごが成長途中なので大人と比べて症状が軽く、あごを広げる治療も可能です。

矯正治療を始めれば比較的早く治療を終えることができます。
一方、大人はあごが完全に成長しており、幼少期よりも受け口が強まる傾向があります。

重度の受け口は歯列矯正だけでの改善は難しく、下あごの骨を切る外科手術が必要になるケースもあります。
顔立ちへの影響や手術の可能性から、受け口の治療はなるべく幼少期から始めた方がいいでしょう。

とはいえ、大人からでも矯正治療のみで治せる場合もありますので、一度矯正専門の歯科医院で相談することをおすすめします。

受け口の矯正方法や治療時期について

受け口の矯正は子どもと大人で治療方法が異なります。
ここでは、子どもと大人それぞれの矯正方法や治療時期についてお伝えします。

子どもの受け口の矯正方法と治療時期

子どもの受け口の矯正方法は主に以下の5種類です。

口腔筋機能療法
(MFT)
・舌や口周りの筋肉を強化し舌の位置を改善するトレーニング
・指しゃぶりや口呼吸などの悪癖を改善できる
・主な対象年齢:5~10歳
マウスピース矯正 ・短時間または就寝中にマウスピースを装着して行う矯正方法
・痛みが少なく小さな子どもでも安心して使用できる
・主な対象年齢:3~10歳
床矯正
(しょうきょうせい)
・床矯正装置を装着して歯列の幅を広げる矯正方法
・取り外し可能なため虫歯のリスクが少ない
・主な対象年齢:6~11歳
急速拡大法 ・急速拡大装置を装着して上あごを短期間で広げる矯正方法
・固定式で食事が摂りづらいが短期間で効果が出る
・主な対象年齢:10~12歳
顎外固定装置
(こがいこていそうち)
・口の外に装置を装着する矯正方法
・主に就寝時に装着して下あごの成長を抑制する
・主な対象年齢:9~15歳

 

子どもの受け口の矯正方法はいくつもあり、治療方法や治療開始時期の決まりはありません。そのため、担当医の考えや経験によって治療法は異なります。

歯並びの状況にもよりますが、乳歯しか生えていない時期から治療を始める歯科医師もいれば、永久歯に生え変わるまで様子を見るという意見の歯科医師もいます。

通いやすい矯正専門の歯科医院をいくつかピックアップして相談へ行きましょう。

大人の受け口の矯正方法と治療時期

大人の受け口の矯正方法は主に以下の3種類です。

マウスピース矯正 ・1~2週間ごとにマウスピースを交換して歯列を整える矯正方法
・食事中はマウスピースを取り外す必要がある
・痛みが少なく目立ちにくい
ワイヤー矯正 ・ワイヤーの引っ張る力で歯を動かす矯正方法
・固定式で痛みが出る場合がある
・ほとんどの症例に対応できる
外科矯正 ・あごの骨の手術と歯列矯正を併用して行う矯正方法
・入院が必要で術後に副作用が出る場合がある
・治療が困難な歯列でも対応できる

 

大人の受け口治療は永久歯が生え揃っていれば、いつでも始められます。ただし、外科矯正は入院が必要な手術なので、治療時期は担当医の判断によります。

ワイヤー矯正はさまざまな症例に対応可能ですが、マウスピース矯正は歯を大きく動かす症例で一部対応できない場合があるので注意が必要です。

希望する矯正方法を実施している歯科医院でカウンセリングを受けましょう。

受け口の矯正にかかる費用の目安

受け口の矯正にかかる費用の目安は、おおよそ以下のとおりです。

  • 子どもの矯正治療:10~60万円
  • 大人のマウスピース矯正治療:70~120万円
  • ワイヤー矯正治療:80~110万円

クリニックによって治療内容や料金体系が異なるので、初回カウンセリングの際に費用について詳しく聞いてみることをおすすめします。

安心して矯正治療を受けるためにも、あなたが納得するまで丁寧に説明してもらえる歯科医院を選びましょう。

まとめ

受け口の矯正は大人からでも決して遅くはありません。

治療を行わなかった場合、生涯顔立ちや滑舌に悩まされるだけでなく、消化不良や肩こりなどの症状を引き起こす可能性があります。

受け口の矯正は決して安い治療ではありませんが、費用以上に多くのメリットを享受できます。治療が終われば見た目の悩みから解放されて、きっと人前で思い切り笑うことができるはず。

受け口の矯正を行うと、全身の健康を維持できることはもちろん、今後の人生をより豊かなものにできるでしょう。