2024.06.08
2024.07.19

マウスピース矯正中に歯がグラグラする原因

 

 

マウスピース矯正中の歯のグラつき、そのままにして大丈夫?
マウスピース矯正とは、透明で薄いマウスピースを装着する歯列矯正方法です。
審美性に優れ、食事や歯磨きのときに自由に取り外すことができるなど、人気のある矯正方法です。
歯列矯正を始めたばかりの頃は、今までグラついていなかった歯がグラグラしてくることがあり驚かれる方も多いと思います。
歯列矯正中(特に治療開始時と調整後)に歯がグラグラすることは、一般的なことで時間の経過とともに歯の揺れも少なってきます。

この記事では歯列矯正中に歯がグラグラする原因とその仕組みについて説明します。
矯正治療の仕組みを知ることで不安を解消することができます。
しかし、なかには注意が必要な歯のグラつきや、痛みがあります。
不安を感じた場合は、すぐに担当の歯科医師に相談しましょう。

歯列矯正で歯がグラグラする理由

①矯正装置による生体現象

矯正装置により歯に力が加わったことで、生体現象が起きるためです。 歯列矯正の仕組みとして、矯正装置を使い歯に力を加えることで、歯根膜という組織に力が伝わります。
それにより、歯が動く方向の面の歯根膜が縮み、元の厚さに戻ろうとして、破骨細胞(はこつさいぼう)をつくります。
破骨細胞により、歯槽骨(しそうこつ)という組織が溶かされ、空いたスペースに歯が動きます。
また、反対の面の歯根膜が引っ張られることにより伸び、骨芽細胞(こつがさいぼう)がつくられ、歯が動いた分のスペースを埋めるように歯槽骨をつくります。
この生体現象が繰り返されることにより、歯が少しずつ動いていき、歯列が整います。
そのため、動揺(歯が揺れること)や痛みが起きるということは、歯並びがしっかりと矯正されている証拠です。

②マウスピース矯正動揺を感じやすい

マウスピース矯正は、毎日取り外す機会があるため動揺を感じやすいでしょう。 ブラケットという装置を着けて、ワイヤーを繋げ、歯列矯正を行うワイヤー矯正も同じく歯の動揺が起こります。
しかしワイヤー矯正は、取り外さずに固定して行う矯正方法のため、動揺を感じにくいという特徴があります。
マウスピース矯正は、食事や歯磨きの度に自分でマウスピースを取り外します。
その際、歯に加わる力が無くなるため、歯がグラグラすると感じやすくなります。

③クロスバイトによる強い動揺

正常な歯並びは、上の歯が下の歯より前に出て噛み合っている状態です。
上の歯より下の歯が前に出てかみ合わせが逆になっている状態をクロスバイトといいます。
クロスバイトを正常な歯並びに治す場合は、強い力が加わるため、他の歯よりも強く動揺が起こります。
しかし、嚙み合わせが正常になれば、この強い動揺も治るため、心配はありません。

歯がグラグラしたときの対処法

①歯を舌や指で押さない

グラグラしている歯を、舌や指で押さないことです。 歯がグラグラすると、このまま抜けてしまうのではないかと不安になると思いますが気にして舌や指で押すと、さらに動揺が起きる可能性があるため、避けてください。

②硬いまたは粘着性のある食べ物避ける

歯列矯正中は、歯がグラグラして不安定なため、食事をすると歯が動くことによる刺激で痛む場合があります。
歯に無理な衝撃を与えないために硬い食べ物やお餅などのキャラメル等の粘着性のある食べ物は、控えるようにしてください。
歯列矯正が完了し、歯が動揺しなくなれば痛みもなくなります。

③自己判断で次のマウスピースに交換しない

早く歯列矯正を終わらせたいからと、自己判断で次のマウスピースに交換しないことも対処法の一つです。 マウスピース矯正は、歯の動き方や歯に加える力などが計算された複数枚のマウスピースを、歯科医師が立てた治療計画通りに交換して装着していきます。自己判断で次のマウスピースに交換してしまうと、無理な力が加わり歯のグラつきだけでなく、最悪の場合、歯や骨などにダメージが出る可能性があります。
歯科医師が立てた治療計画通りにマウスピースの交換を行うことが、歯列矯正を最短で完了させる方法なので、守るようにしてください。

④定期的に歯科医院で歯のクリーニングを受ける

歯列矯正中、毎日丁寧に口腔内の清潔を保っていてもセルフケアでは取りきれない汚れが少しずつ溜まってしまいます。歯垢(細菌のかたまり)が歯石に変化すると、専用の器具でなければ取り除くことができません。
定期的にクリーニングを受けることで、虫歯や歯周病の予防と早期発見により、すぐに治療を受けることができます。

⑤担当の歯科医師に相談する

歯の動揺には問題のないものと、治療が必要なものがあります。
マウスピース矯正は、基本的に1日20時間以上マウスピースを装着する必要があります。
歯の揺れや痛みが不安で、自己判断でマウスピース装着を止めてしまうと、歯が元の位置に戻ってしまい、歯列矯正がやり直しになる可能性があります。
気になる症状は、我慢せずに担当の歯科医師に相談するようにしてください。

注意が必要な歯の動揺

歯列矯正中に起こる歯の動揺や痛みは一般的なことですが、中には治療が必要な場合もあります。
どちらか判断することは難しいことなので、歯列矯正中に「これは一般的な歯のグラつきなのかな?」「強い痛みが続くけど、大丈夫かな?」と悩んだときは、すぐに担当の歯科医師に相談してください。
歯科医師が検査を行い、判断する必要があります。
治療が必要な動揺や痛みの例を紹介します。

歯周病

歯周病は口腔内にある歯垢(細菌のかたまり)の感染によって、歯ぐきが赤く腫れる炎症や膿が出るなどの症状が起きる病気です。歯周病が悪化すると、歯の支えとなっている歯槽骨が溶けて、歯がグラグラしていき、最悪の場合そのまま歯が抜けてしまいます。
歯列矯正を始める前に、虫歯や歯周病の検査や治療を終わらせますが、歯列矯正中に歯周病を発症した場合は、矯正を中断して歯周病治療を行う必要があります。

歯ぐきからの出血がある場合などは、注意が必要です。
マウスピース矯正は、ワイヤー矯正と違い取り外しができるため、いつも通り歯磨きができ、歯周病になるリスクは低いといえます。しかし歯列矯正中は、1日のほとんどの時間にマウスピース装着が必要なため、しっかりとケアをしないと汚れが蓄積してしまいます。
一般的に口腔内では、唾液によって汚れや細菌を洗い流していますが、マウスピースを装着していることにより、その作用が行き届きません。歯列矯正中の歯磨きは、歯間ブラシやデンタルフロスなども併用して、しっかりとケアを行うようにしてください。

また、口腔内だけではなく、マウスピースも清潔に保つようにしてください。
方法としては毎日の水洗いと、専用の洗浄剤を使って汚れを落とします。熱によってマウスピースが変形する恐れがあるため、熱いお湯は使わないように注意してください。
また、歯磨き粉には研磨剤が含まれていることがあり、小さな傷がつくことがあります。その傷から細菌が繁殖する可能性があるため、避けてください。

外傷による歯の揺れ

事故などにより歯に外傷を負うと、歯の支えとなっている歯槽骨に衝撃を受けて、歯がグラグラすることがあります。
これは、歯へのダメージによって歯根膜が広がるために起こります。
もし、歯に外傷を負ってしまった場合は、すぐに歯科医院で診てもらってください。激しいスポーツなどを行う方でも、マウスピース矯正であれば、スポーツ時に取り外すことで外傷のリスクは無くなります。しかし、マウスピースは決められた時間装着する必要があるため、矯正効果を十分に得られなくなる可能性があります。
歯科医師とよくご相談の上、矯正方法を決めるようにしてください。

咬合生外傷(こうごうせいがいしょう)による歯の揺れ

かみ合わせが悪く、部分的に強くかんでしまっている歯がある場合は、その衝撃により動揺を感じることがあります。
過度な力が加わっている歯の動揺は、歯ぐきに埋まっているセメント質、歯根膜、歯槽骨などの深部歯周組織を損傷する咬合生外傷(こうごうせいがいしょう)といい、注意が必要となります。

歯ぎしり、食いしばり

歯ぎしりや食いしばりによって、過度な力が加わると歯がグラグラする場合があります。
インビザラインなどのマウスピースは、薄い素材でできているため、歯ぎしりや食いしばりをしてしまう方には、適応できない可能性があります。

保定期間中の歯の動揺

歯列矯正の治療完了後は、リテーナーという保定装置を装着する保定期間が約2~3年必要となります。
歯列矯正完了後は、歯が元の位置に戻ろうと動いてしまいます。
それを防ぐために、保定期間も歯科医師の立てた治療計画通りに行う必要があります。

基本的には歯列矯正完了後の約6ヶ月は、マウスピース同様に食事と歯磨きのとき以外は、リテーナーを装着する必要があります。6ヶ月を過ぎた頃に、就寝時のみの装着になることが多いです。
通常であれば、歯列矯正完了後に歯のグラつきは治っていきます。
しかし、リテーナー装着時の歯に力が加わっていない状態で、いつまでも動揺が治らない場合は、問題がある可能性が高いため、すぐに担当の歯科医師に相談してください。

まとめ

歯列矯正によって、歯がグラグラすることは、過度に心配する必要がないことをわかっていただけたと思います。
また、歯の根っこの部分を支えている歯根膜は、かんだときの刺激を和らげるクッション性があり、健康な歯でも多少は動きます。
これを生理的動揺といい、問題はありません。
この記事で紹介した動揺が起こった場合の対処方法も参考にして、歯列矯正を続けてください。
ただ、歯列矯正は長期間の治療となるため、不安をそのままにしておくと、ストレスの原因にもなります。
途中で嫌になり止めてしまうと、矯正にかかった時間や費用が無駄になってしまいます。
また、歯周病などの注意が必要な動揺もあるため、不安なことは担当の歯科医師にすぐに相談するようにして、矯正完了まで安心して続けられるようにしてください。