2024.04.05
2024.08.21

抜歯矯正とはどんな治療?抜歯矯正のメリットとデメリット

 

 

矯正治療をする場合に「抜歯」が必要なことがあります。抜歯を伴う矯正治療を「抜歯矯正」といいます。
「抜歯」というと何となく怖い印象を受けたり「できるだけ健康な歯を抜きたくない」と思ったりすることもあるかと思いますが、抜歯矯正とは具体的にどのような治療法になるのでしょうか。
抜歯矯正の特徴について、メリット・デメリットを含め、詳しく解説します。

抜歯矯正とは

矯正治療は、始める前に現在の歯並びの状態を詳しく検査し、治療計画を立てます。その際に「抜歯」が必要と判断されることがあります。

矯正治療を進めていく中で抜歯が必要なケースを「抜歯矯正」といいます。反対に抜歯が必要ないケースを「非抜歯矯正」ということがあります。
お口の中の状態は人それぞれ異なるので、全く同じ症例はありませんが、次に挙げるようなケースでは抜歯が必要となることが多いです。具体的な例を詳しく紹介します。

抜歯が必要なケースとは

代表的なケースを3つ紹介します。

歯と顎のバランスがとれていない

歯の「叢生(そうせい)」が重度の人は抜歯が必要になります。叢生とは、歯並びが凸凹した状態のことを指します。
顎の大きさに対して、歯が並ぶスペースが十分に足りていないと並びきることができない歯は、歯並びからはみ出て、ガタガタに生えるために起こります。

歯が並ぶスペースが足りないのに抜歯をせずに無理に並べようとすると、歯が骨からはみ出したようになることや口元が全体的に膨らんだような作りになることがあります。そうなってしまうと、口元が前に出てしまい見栄えが良くありません。

このようなケースの場合には、歯が並ぶスペースを作るために、最初に抜歯をしてから、矯正治療を行います。

上下の前歯が前に傾斜している

歯並びに大きなデコボコは無いにも関わらず、「前歯が前に出ている」、「口元が前に出ている」「口がうまく閉じない」状態は、抜歯が必要になります。

不正咬合の状態として「上下顎前突(じょうげがくぜんとつ)」といわれることもあります。
前歯を大きく後ろに下げる必要があり、そのスペースを確保するために抜歯矯正となることが多いです。上下左右1本ずつ4本を抜歯することが多いですが、検査の結果、どの程度歯を後ろに下げる必要があるのかを詳しく調べてから行います。

上下の歯のかみ合わせにズレがある

いわゆる「出っ歯」「受け口」などの状態で、上下のかみ合わせにズレがある場合には抜歯矯正になるケースが多いです。抜歯したスペースを利用して、歯を後ろに移動させます。歯並びの状態に応じて、上下2本ずつを抜歯することが多いですが、かみ合わせのズレと必要なスペースを検査して、抜歯する歯の本数を決めます。

また抜歯では対処できないほどに大きく顎の骨がズレている場合には、外科的な処置が必要となることもあります。先天的に骨の形成に問題がある場合には、保険適用となります。その場合は決められた施設での入院手術になります。

抜歯をする場合の部位

抜歯をする場合には、基本的にはかみ合わせに影響が少ない歯を抜歯します。前から4番目の「第一小臼歯」、または前から5番目の「第二小臼歯」が対象となることが多いです。

またそれ以外では、先天的に形態が小さい「矮小歯(わいしょうし)」や余分に生えた「過剰歯(かじょうし)」がある場合には、その歯を抜く場合もあります。
先天的に生えていない歯がある場合には、歯のバランスをとるために、その歯と対合する位置にある歯を抜くこともあります。

いずれの場合も全ての検査をした上で抜歯する歯を決め、矯正計画を立てます。

抜歯をするタイミング

基本的には、矯正装置を装着する前に抜歯を行います。

抜歯をしてスペースを確保した段階で、矯正装置を取り付け、歯の移動を開始します。

小学校高学年や中学生程度の年齢で、まだ顎が成長しそうな場合には、まずは非抜歯で矯正治療を開始して経過を観察しながら、必要であれば抜歯を行うという場合もあります。その場合は、矯正治療の過程で抜歯をすることになります。

メリットとデメリット

抜歯矯正をする場合のメリットとデメリットをまとめると次のようになります。
「出来るだけ抜歯をしたくない」と考えている方も多いと思いますが、抜歯をしないことで、矯正治療がスムーズに進まなくなることがあるため、歯科医師とよく相談しましょう。

抜歯矯正をする場合のメリット

抜歯をせずに矯正をできることもありますが、抜歯が必要になるケースも多く存在します。抜歯矯正をする場合のメリットをまとめると次のようになります。

確実な矯正治療が可能となる

抜歯を行わないと狭いスペースの中に無理に歯を並べる状態になるため、歯がきれいに並ばない可能性があります。
顎の大きさに対して歯列の大きさが膨らんだようになってしまい、口元が前に出たように感じてしまうこともあります。抜歯を行うと、歯を並べるスペースを十分に確保することができるので、余裕をもって歯を並べやすくなります。

口元のバランスが整う

顎に十分な大きさが無いのに歯を無理に並べてしまうと、前歯が前方に押し出されるリスクがあります。抜歯矯正はそのリスクを軽減させることができ、口元のバランスが整いやすくなります。

親知らずが綺麗に生えることがある

親知らずを抜歯せずに矯正治療を進める場合、抜歯矯正をして歯を並べるスペースを確保すると、同時に親知らずが真っ直ぐに生えてくるスペースを確保することにもつながる場合があります。
親知らずの生え方が悪いと、周囲に汚れが溜まりやすくなり、後々親知らず周囲にトラブルを起こしやすくなります。

抜歯矯正をする場合のデメリット

どんな治療にもデメリットがあるように、抜歯矯正にもいくつかのデメリットがあります。次のようなデメリット・リスクがあることを知っておきましょう。

隙間が出る可能性がある

抜歯した部分の歯と歯の間に隙間ができます。この隙間は埋まるまでに時間がかかるため、なかなか隙間が埋まらず不安になることがあるかもしれません。
抜歯によってできた隙間は、通常半年〜1年で気にならないほどに狭くなりますが、隙間が出る可能性があることを知っておきましょう。

治療期間が長くなる

抜歯をすると歯列に大きな隙間が生まれ、歯を移動させる距離が長くなるため、通常よりも治療期間が長くなることがあります。
さらに抜歯自体も、抜いた部分の治癒までに時間がかかるため、トータルして治療期間が長くなる傾向にあります。

抜歯自体に負担がかかる

抜歯の施術自体に不安を覚えることも多いでしょう。慣れていない方がほとんどだと思うので、抜歯をすることによる精神的な負担があります。

抜歯は局所麻酔をして行うので、抜歯自体に痛みはありませんが、麻酔が切れてきた頃に痛みを感じることがあります。痛み止めが処方されるので、麻酔が切れる前に飲んでおくと安心です。

抜歯後の腫れや痛みは2~3日がピークで、その後は軽減していきます。出来るだけ安静に過ごせるよう計画を立てましょう。
抜歯直後は、腫れや痛みを軽減させるために、次の点に注意するようにしましょう。

  • 激しい運動や入浴、飲酒など血の巡りが良くなることを避ける
  • 喫煙など患部の刺激になることを避ける
  • 患部を指や舌で触らない
  • ブクブクうがいをせず、優しくゆすぐ(歯を抜いた穴が塞がりにくくなり、痛みの原因になります)
  • 処方された薬を決められたとおりに服用する

非抜歯で矯正をする場合

歯の凸凹や傾斜具合が軽度の場合は、無理に抜歯をしません。次のような方法でスペースを作ることがあります。

歯の側面を少し削る(I P R)

歯の側面をヤスリのような器具で少し削る方法があります。I P Rやストリッピングといわれます。「削る」といっても、虫歯を削る時のように大きく削るわけではありません。歯の一番表層は「エナメル質」という痛みを感じない組織です。エナメル質の厚さは1〜2mmといわれていますが、I P Rで削るのは0.2mm〜0.5mm程度のみです。
抜歯するほどの大きなスペースは作れませんが、数本の歯の側面を削れば、合わせるとそれなりのスペースを確保することができます。

奥歯を後ろに移動させる

奥歯を後ろに移動させて隙間を作る方法があります。他の歯も順番に動かし、歯を並べるスペースを作り出します。
「遠心(えんしん)移動」といわれるこの方法は、親知らずがないことが前提となるので、親知らずがある場合には、親知らずの抜歯が必要になります。マウスピース矯正では、この遠心移動を得意としています。

まとめ

抜歯矯正とは、歯並びを整える際に歯を並べるスペースが足りない場合に行われる治療方法です。抜歯をしてスペースを確保することで、歯がきれいに並びやすくなります。

抜歯せずに矯正治療ができるケースもありますが、抜歯が必要なケースで抜歯をせずに無理に矯正を行うと、歯がうまく並びきらないことや歯列が大きくなり前歯が飛び出して見えてしまうことがあります。

矯正治療において、「非抜歯矯正」か「抜歯矯正」かは、仕上がりを左右する非常に重要なポイントです。抜歯矯正が必要だと判断された場合には、抜歯することが良いといえるでしょう。どちらかの判断が微妙な場合には、メリット・デメリットを考慮して、歯科医師と相談し納得した上で決めると良いでしょう。